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  映像研究

印象

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・10代半ばで最初に興味を持った、もう少し率直に言えば、最初に好きになった写真家は高橋恭司という人で、雑誌のクレジットを見たり、池袋の大きな本屋で写真集を手に取ったりしていた。写真集を見る、という行為が他の色々なことよりも大人っぽく思えていたかもしれない。時間をかけて一枚の写真を見るときに、一体何を感じているのか。それは言葉から離れた場所で、しかし確かに思考でもある。繰り返すことによって自分の写真を見る知覚が育てられていく。そうした時期に最初に見た写真は刷り込みのように強く印象に残っているだろうか。あるいは写真家の言葉も。『Road Movie』という写真集には吉本ばななとの対談が付録とされていて、その何気ない会話(と演出されているのか、ほんとうにそうなのか)を文字で読むことも繰り返した。その中で語られていたエピソードに、「夕暮れの空の色は写真には映らない」、「映らないと思うと安心して一日を終えられる」というくだりがあったように記憶している。そのエピソードを時々思い出す。夕暮れの空を見て、良いなと思い、写真に写してみようかと考えて、しかしそうだあの対談で映らないと言っていた、というように。それでも写しても良い。しかも現在ならば日常的に手にしたカメラはiPhoneだった。空を見て、スクリーンをかざし、スクリーンに映された空を見て、その空に触れて、少し暗く見えるように操作する。その触れている映像と空の色は異なると思いながら。そうして写した空の写真は再度調整することもできる。自分の印象と照らし合わせながら。