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  映像研究

ソールを見る・見ることから考える・物のディテール・虫に人気

 
・いま一番したい贅沢はレッド・ウィングのアイリッシュ・セッターのソールを交換してもらうために修理に出す、ということで、それはどうやら一万と数千円くらいで可能らしいのだけれども、なかなかタイミング的なものが掴めずに、ソールを眺めては、履いたり履かなかったり、写真に撮ったり撮らなかったりしている。このブーツを購入したのは18歳の誕生日だったので……とりあえずそれから人間基準にしたらまぁ結構な時間が流れている。


・フェスティヴァルを構想中であることもあって、そのフェスティヴァルでは去年に引き続き「物々交換スペース」を設けてみようかと思っていることもあって、物と、その物が使われていくこと、そして所有すること、買うこと、誰かにそれを贈与すること、交換すること、捨てられること、など、物の色々なシーンについて考えたりもしていた。革のブーツはソールを張り替えれば一生だって履けるかもしれない。プリンタはインクを注ぎ足しても一生は使えそうもない気がする。Tシャツはきっと10年も着ていればぼろぼろになるだろうけれども、継ぎ当てをしたり、縫ったり、色々していると、そもそもの原型を全くとどめていない「Tシャツのような何か」になるかもしれない。


都築響一という人が東北の古いどてらのような服を撮影していたことを思いだした。継がれて、当て布を重ねて、パッチワークのようになった服。自分はそのオブジェを「お洒落だなぁ」とか「かっこいいなぁ」とか思うし、かなりいくらでも見続けることが出来るという意味において多分「美しい」とも思うけれども、自分の生活のなかに、あのような物はあるのかどうかと考えると、わからない。


・毎年着ているユニーク・クロージングの薄手のVネックのニットがあって、自分が知っている限り周りの人と被る率がかなりの高打率なアイテムなのだけれども、そして自分はそのニットを、黒、濃いグレー、薄いグレー、と三色持っているのだけれども、その中の「薄いグレー」のみが虫に人気だ。虫がばんばん食い荒らして、先日の衣替えの際にひどい状態で発見された。イメージとしては、昔の裏原ブランドとかでありそうな「銃弾の痕みたいなデザインが施されたニット」みたいになった。ちなみにその「銃弾」のセンスはわからないですけれども。


・そもそもそのニットは去年から既に虫に人気だったので、数センチの穴が空いていたのだったから、そこを赤と青の糸で繕ってみたら、それは割に好評だったのだった。好評だったのだから、その「銃弾の痕」も全部カラフルな糸で繕ってみようかとも思っているのだけれども、それはもう「繕う」の範囲を完全に超えた、ある種のクリエイティヴなセンスを要求されているので、考え中。でもきっとそのニットはどうにかされるのを待っているようにも(擬人化)思えるのだから、もうしばらくしたら「セーターのような何か」にしてみようと思っている。