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  映像研究

MM2011の記憶・3日目

 
・覚えている限りのMMの記憶はとうとう3日目。「あ」っというあいだに過ぎる時間の不思議さについて。6時に起床して火を熾(おこ)すことの良さについて。そして熾火(おきび)が残ってるという環境の素晴らしさについて。その熾の上に薪を重ねて置いたならばすぐに炎が大きくなってその周りに人が集まってきた。早起きした人だけの特権としてお茶や昨日の残りの汁物を飲めたりするような種類のフェスティヴァル。「フェスティヴァル」と「祭り」と「集い」の、同じところと違うところについて考える。例えば「祭り」が「ケ=日常」に対する「ハレ=非日常」として位置づけられるのならば、この状況は何だろうかと考える。あるいはまた「祭り」が、一般的にはある地域的な共同体(コミュニティ)に根ざした集まりであるとするならば、そのような地域を特別持っていない、この祭りはいったい何なのだろう。



・ようやくみんなが目を覚ましたのは8時。それぞれのフェスティヴァルの最後の時間を過ごす。自分は熱した薪を窯にセッティングしてピザを焼く準備を始める。去年と同じ行程が去年よりも少しだけスムーズになっているようなこともまた「知恵」について考えるきっかけになる。初めての驚きと何かに慣れていくことの趣きについて。あるいはまた忘れていた現象を思いだした時の感覚について。手を動かして何かを組み立ててみたりすることからわかることがある。そのうちの大半はもしかすると忘れていくのかもしれない。思い思いにピザを焼いて食べることについて。道具を使って何かを操ることについて。昨日ドリップして(必死に人数分)入れたコーヒーよりも今日コーヒーメーカーで入れたコーヒーの方が好評だった件について。



・時間は加速して「あ」っというあいだに気がつけば集合写真を撮影していた。思い思いのポーズで写る集合写真のようなもの。最後はみんなで集まって集合写真を撮影するような種類のフェスティヴァル。それは「主催者」と「招かれる人」とを、あるいは「お金をもらう人」と「お金を払う人」とを、そして「楽しませる人」と「楽しむ人」とを、可能なかぎり分けないような場のあり方について考えるきっかけになった。そして言うまでもなくその「場」は誰かの作品ではない。そのことを確認できたことの大きさについて。



・あるいは片づけについて。片づけることは、「場」を元在った状態に戻すことで、それは野外でのアクティヴィティ全般に共通する「最後の行程」かもしれない。あるいはすべてのアクティヴィティのプロセスの隙間のようなものかもしれない。プロセスだと思っていた色々な行動が円を描くようにひと回りして元に戻る。円を閉じるように「片づけ」がある。「後片づけ」という言葉がしっくりくるような行為を指し示す。取り付けたものを取り外す。貼ったものを剥がす。広げたものをたたむ。たたんだものを重ねる。延ばしたものを巻き取る。開いたものを閉じる。歩いた跡を消す。水で洗い流す。火を消す。食べ物の余りは微生物にお願いする。そうして校庭は校庭に、教室は教室に、原っぱは原っぱに戻る。記憶は残ったり残らなかったりするのだろう。



・とかの気持ちになっている余裕も全く無く慌ただしくも13時過ぎにフェスティヴァルは終了。残って最後の後片づけをした10数人で裏集合写真の撮影をしてみたのは、その写真に今回の「MM2011準備室」という空間を持たない関係性、その関係性から生まれる力に似ている何かが写るかもしれないと思ったからだった(not スピリチュアル)。関係性から生まれるフェスティヴァル。思いつきから生まれたフェスティヴァルについて。そのフェスティヴァルについて振り返る余裕はまだないのだけれども、感想文はあらゆる視点のあらゆるヴァージョンから書けるだろう。あるいは今回は反省文だって(良い意味で)書けるかもしれない。



・そうして車で高尾に荷物を降ろしつつ小金井のカレー店へ向かって小規模打ち上げ的空間。帰りは熊本からやってきているT部長が車を運転できるという事実に気がついて飲酒。集まって残った10名ほどで来るべき11月以降の素晴らしい毎日について語り合う。語り合うだろう。語り合う言葉が極まったならば歌を歌い始めるかもしれない。そうだ今年は歌を歌わなかったし合唱もできなかったなぁと思いつつ『夢で逢えたら』をMちゃんとデュエット。そして遠くの街に住むことを思ったり思わなかったりしながら『500マイル』を、なぜか西東京の限られた地域で2011年の流行歌となっている『ラブストーリーは突然に』を歌う。CJくんが歌っていた『生まれた街で』と『瞳を閉じて』が良かった。Nくんが歌っていた『野ばら』も良かったし、また別のNくんが歌っていた『愛は勝つ』もオリジナル越え必死のカバー。気がつけば11時になって帰宅。帰宅させてもらう。車を運転してもらった。



・フェスティヴァルが終わる夜。ぐうぐう寝る。10月30日から10月31日。