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  映像研究

芽と葉と、あるいは土の下の四月の記録

 
・冬のあいだもちろんのように葉をすべて落とし、からからに乾き切っていて生きているのか枯れてしまったのかもわからなかった山椒の木が芽を出す。木の節みたいなところがぽつぽつと赤くなったならば、その後芽が出てすぐに葉っぱが現れる。それと並行してつるつるだった幹には小さな刺も生えてきて、初めの芽から10日もすれば、何だかわからない枝的なものだったのが、今やすっかり山椒の木のような様子になっている。不思議だと思う。土の上の見えている部分ではないところにその力のようなものがあるのだろう。根と土の関係をイメージする。生えてきたばかりの葉っぱを指でこすると当然山椒のテイストなのだけれど、しばらくするとバニラみたいな甘い香りだけが残った。



・いろいろな場所でいろいろな自然の変化を観察していた四月。中旬には茅ヶ崎にある農家に知人の紹介でタケノコを掘りに行った。竹と竹のあいだにどのようにタケノコが成長しようとしているのかをレクチャーしていただき掘る。真剣に30代の男女がかなり全力で掘ったならば、実に見事なフォルムのそれが地上に運び出された。そうしてさっきまで土に埋まっていた植物であるところのタケノコを焼いたりして食べ、あるいはその農家で収穫されたキャベツやら菜の花やらの野菜も頂き、またその農家では畜産もしているのだから養豚場のすぐ側でかつてそこに居られた豚までもを食べさせて頂いて感無量。わざわざ「パーマカルチャー」と名指す必要もないような場所と時間。野菜の育つ様子やいろいろな木を観察したりもした。そしてその翌々日には高尾のT邸にてタケノコパーティー(TTT)。すっかり灰汁抜きされたタケノコのフルコースに誘われて山部ほぼ全員集合。



・あるいはまた下旬には山部平日部隊featuring妊婦、で青梅から奥多摩方面の某所をトレッキング。某所を某所と表記するのには理由があり、というのもそもそもその日は年に一度のイベント「山菜フェス」として企画されていたのだけれども、その前約一週間に渡って奥多摩檜原村〜高尾を(文字通りの)フィールド・ワークした結果、気候の問題なのか、季節が遅いのか、あるいは探し方が悪いのか、どうにも山菜が採れるような気がしなかったものだから、諦めてトレッキンッグに予定を変更したのだった。しかしその結果完全に無欲の勝利としての大収穫。ハイカーなのか山菜ハンターなのかわからない中高年の方々の助けもあって、エコバッグ一杯のタラの芽とワラビやらゼンマイ的なものが収穫できた。夜には当然それを持ち帰って高尾のT邸にて山菜パーティー(TTS)。山部メンバーWちゃんの誕生日会も兼ねて10人以上が集まる。



・年も明けて年度も跨いで暖かくもなってきたのだから、誰もが誰か新しいことを始めようとしている。あるいはその準備をしているのだろう。土の上にはまだ見えていないもの。根と土の関係をイメージする。たとえば昨日はこの春から家具作りを学び始めた後輩を交えて久々の会食。まだ現れていない形態とまだ存在していない物体について話を聞いた。そういうことこそがどうしようもなく面白い春