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  映像研究

内側

・後から書いておく記録。この日は午前中少し家で作業したあとに出かける。

 

・ランチは新宿駅ベルクで。毎朝のように「ベルクでモーニングプレート」とつぶやいていたのは、職場が御苑方面にあった時代のことだからちょうど10年前だった。高尾から始発に乗って早めに新宿駅に着いたならば、「ベルクでモーニングプレート」という生活がかつてあった。今日はジャーマンブランチ。コーヒー豆を買う。

 

四ツ谷で降りて麹町を横切り歩く。かつての父親の職場の近くを横切り、少し記憶を呼び起こされながら。久しぶりに山手線の「内側」へ来た。しかも歩いている。

 

・JCIIライブラリーという資料室に来た。少し早く到着したから隣のビルの「日本カメラ博物館」へ。興味深かった。時々来たい。定刻にライブラリーに入ってちょうど2時間コピー作業。写真美術館の分と合体させれば、必要な資料は大体揃ったのではないか。ありがたい。

 

・その後歩いて市ヶ谷。総武線で水道橋。アテネフランセで映画の整理券を受け取って、そういえば、と思って友人が準備しているお店へ。立ち寄ってしばし歓談。神保町方面へ。

 

古書店の散策。探していた写真集のうちの一冊が難ありとはいえ奇跡的な金額で棚に並べられていたのを見つけたことが今日のファインプレー。中身を確認させていただきクレジットカードで購入する。松江を写した写真集。

 

アテネフランセに戻って佐藤真『SELF AND OTHERS』を見る。予想(期待)していたが16mmフィルムでの上映だった。映画館では大抵後ろの方の席に座るが、今日はそれを狙って、上映室の方を何度か振り返ってみる。確かに上映装置が回転していた。光を発して。ある光を写し撮ったネガフィルムが、光を透過して印画紙にプリント・定着されて、その印画紙を写したフィルムが、現像されて回転されて、光を透過してスクリーンに映されている。上映前におそらくは主催されていると思われる方が「今後デジタルリマスターも計画されているのでプリントでの上映の機会は貴重になるでしょう」と話されていた。予想(期待ではない)だけれども、多分もうこの先にこの出来事は起こらないだろうと思う。最初で最後の上映。一度きりの出来事だった。

 

・その映画を最初に見たのはいつだっただろうか。2000年当時は見に行けなかったような気がする。それでも事あるごとに見返して、10回は見ていないくらいだろうか。気がつくと「一番好きな映画」のひとつになっていた。見るたびに新しいことを考えられる。「長回しが印象的な映像」というような感じを持っていたけれども、今回見てむしろ「ばっさり切れること」の感じの方が残った。撮影した時の「映り込んでしまった」感触が活かされているというか。いつかこの映画を他の人と一緒に見ながら分析をしてみたい。

 

・全体を通しては、風に吹かれる緑が印象に残った。それから波。波立つ緑もあった。手前から奥へゆっくりと。あるいは奥から手前へ押し寄せる。見上げるとさざめいている。そのようなものを見ていることとはどういうことかと、答えのない問いを抱えて帰った。