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  映像研究

寒山

・202011102000。京王線を待つ初台駅のホームで文章を書いても良い。今日は朝から久しぶりに恵比寿へ行けた。写真美術館の図書室で古い雑誌をコピーする半日。何をどこまでコンプリートすべきかわからなくなってきたが、少しずつ自分の問題は浮かんでくる。ぽわんと浮かぶ問題を整列させるよりも前になるべく膨らませたい。膨らんだ問題は問題が動きたい方向に動くのだろう。そのような論文の立ち上げ方ができたら良いと思う。そんなことを考えながらページを捲る。お昼休みに石元泰博展を観ることもできて良かった。

 

・職場に寄り90分で一つ仕事終える。この感じで五つくらい終えられれば良かったが、明日できることは明日やるというマインドで今週を乗り切りたい。気温と服装と職場の人たちの表情に、うっすらと「年末進行」の予感が浮かぶ。

 

・雑誌を書店で買い、忘れてリュックから雑誌が転がり出る。数日前に購入したのはThemマガジンで、書店で見かけた表紙の感じからちょうど10年くらい前の「山の感じ」が漂っていて、手に取りパラパラしたところ、マウンテンリサーチの小林節正さんのインタビューなどあり即購入した。トレンドは繰り返す、ということなのだろうか。しかしトレンドなど関係なく、リサーチを続けている人がいる、ということだろう。金峰山の方はいまどれくらい寒いのだろう。冷たい空気を鼻から吸い込むことを想像しながらページを捲る。

 

・スタイリストの本間良二さんのインタビューで田渕義雄さんが亡くなられていたことを知る。今年の初めのこと。亡くなった方について書くことは難しい。まったく面識がなくとも。高尾に越した2008年によく読んでいたのは田渕さんの書いた文章だった。とりわけ『寒山の森から』は印象深い。今でも時々そのフレーズを読むことがある。かつて読んだ時とは違う場所で、違う/同じ自分が読む言葉から、新しく懐かしい感じを受ける。田渕さんと意識せず『ワーズワースの冒険』にときめいたのが1996年、そしてその言葉を舐めるように読んだのは2008年、そして今は2020年だった。

 

山で暮らすようになって、物事を単純にしか考えないようになった。結局、人は誰でも自分が好きになってしまった土地で、好きになってしまった人や物と一緒に暮しているだけのことなのだと思う。誰でも不平や不満はあるだろう。しかし、人は誰でも今ある自分の暮らしを本当はかなり気に入っている。そうでない人は、さっさと自分の暮らしをかえている。そうだ、好きになってしまった土地で、好きになってしまった人や犬や道具と一緒に暮すことを人生というのだ。そして、そのために人はさまざまに職業を選択している。 誰の生活が正しいとか、誰の暮しが人間らしいとか、都会は人が多すぎるとか、田舎の暮しが本当だとか……そんな言い方はいつの間にできなくなってしまった。今ある心の総体として、今ある社会や文明が今このようにしてあるにすぎない。(田渕義雄『寒山(かんざん)の森から―憧れの山暮しをしてみれば』より)

https://mrtr.hatenablog.com/entry/20080929

  

 

Them magazine 2020年 12 月号 [雑誌]

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  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 雑誌