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  映像研究

スニーカーは燃える

・202009150923。夏の労働の季節はなんだったのだろうかとぼんやりしながら自分の研究の時間を取り戻す9月。三寒四温ではなく四寒三温あるいは三温四寒。意識にのぼらないような段階により季節がワイプ的に切り替わる。布団にくるまることが楽しい季節になる。日曜日の夜のオンライン飲み会のダメージが大きかったのか少し喉が痛く風邪をひきそう。どうせ風邪をひくなら良いタイミングで良いプロセスでひきたいと思い久しぶりに足湯でもしようかと『風邪の効用』を読みながら結局普通に半身浴。季節が変わるとは何かと考えて、それは汗のかきかたが変わることでもあるのだと思い出す。毎年決まって8月後半から9月に胸が痛くなる(比喩的または文学的な意味ではなく)のは自分の身体が季節の変化とともにあることの証拠だと思う。

 

・9月は大掃除月間でもある。研究環境を整えることと衣替えにより部屋の中の風景を少し変えてみる。そして今日は待っていた燃えないゴミの日だからスニーカーをまとめて捨てる。かつて住んでいた八王子市では靴は燃えるゴミだったが現在住んでいる稲城市では靴は燃えないゴミだった。どうせなら燃やしてほしいと思う。有害な何かが発生するのかもしれないがそれでも燃やしたい。お焚き上げたい。2000年代前半に購入したスニーカーは2010年くらいの段階でその大半が壊れてしまっておりやむなく捨てた。その時期の分別をかいくぐり厳選された数足は、しかしだからといってもう履くことはないだろうという判断。スニーカーを捨てる。それぞれに思い入れが強く、アイフォーンでポートレートを撮影してみる。写真を撮ったら言葉をかけたくなる。送る言葉。

 

 

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 ・NIKEのオビディアン。NIKEのスニーカーは宮下公園がナイキパークになった時にすべて捨てたがこの一足だけはなぜか残しておいた。スウォッシュがないからだろうか。おそらくヤフオクで購入した。スニーカーinスニーカーというコンセプトシューズ。普段の自分のファッションの方向とはまったく異なるけれども、スケートボードに乗っている風景が見える。そのようにして自分のセルフイメージが書き換えられるのもまた面白かった。サイズ大きめで履きたい。

 

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 ・アディダスのアディデスマン。アメ横で安かったから買ってみたがある時期に完全にほぼ毎日履いていた。すべての部分のすべての素材が必然的に選ばれてこの形になっているように思える。つま先が少し上がるデザインが気持ちよく、その後自分の履く靴がすべてそのシルエットに規定された。素材的にもそうだがクラークスのナタリーのようなイメージがある。かかとを踏み潰すことを想定されたデザインだが絶対に踏み潰さない。でもキャンプの時にテントからちょっと外に出るような風景が浮かぶ。

 

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 ・アディダスのXTR。2000年前後にはXTRとシーユーレイターが憧れだった。シーユーレイターは(あらためて凄い名称だと思う)あまりにも高価で買えず、XTRも赤と青は手に入れられなかったのでこの緑をヤフオクで購入した。しかしサイズが少し小さい。そして暴力的に重い。さらに90年代〜00年代のアウトドアカテゴリのスニーカーのよくある話として、防水透湿的な機能はまったくない。それでもデザインが大好きだった。いつか機会があればまた履きたい。

 

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 ・アシックスのGEL。正式名称は知らない。大学生の頃八王子にスニーカーを買いに行きたぶん目当ての物はなかったのだがスポーツ店の店の外のワゴンに安く現品限りで売られていた。なんだこれ変な靴だと思ったが、サイズが合い買ってみて、2010年代中盤まで一番よく履いていた。インソールを剥がしアウトソールの一部ももぎとれて、しかしそれによりシャープな印象になったと思う。家の近所の走っていた時期にもこのスニーカーだった。ゲルマイはHF的な文脈で有名だから再発されたがいつかこちらをモチーフにしてもう一度デザインしてほしい。

 

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 ・アディダスのアディタンジェントは捨てない。綺麗だからということもあるけれども、このスニーカーのデザインから学ぶことは多く時々見たい。見るたびに発見がある。かつては四色全て持っていたが最終的にはこのイエローだけが残った。最近のスニーカーの履いた感じは凄いと思うが、このアディタンジェントの乗り物に乗っているような感覚は特別だと思う。かかとのプラスチックのパーツは千切れてしまった。それでも時々は履いてみようかと思う。