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  映像研究

荷物を待ちながらの回想と日記

・201910240914。荷物を待つ時間というものがある。ちょっと良いハニカム地のサーマルをまとめて購入した。それらが届けられるのを待ちながら作業。もうこの10年くらい春も秋も冬もサーマルしか着ていない。新しい服でも古着でもほどよいサーマルをつねに募集している状態。学生の頃にハニカム地のサーマルの格好よさを教えてくれたのは友人のIくんだったことを思い出す。回想のモード。それぞれの時期の秋の感じを反芻する。着ることで記憶が蘇る服もある。そして思い出しても、その思い出したことによって昇華されるようにして、あるいは思い出したこと自体も、そこに記憶のタグがあることも、忘れてしまうから書いておく。

 

macのメールソフト、マシンが変わってもメール自体はアカウントに紐付けされ2008年から残っている。ふと思い立って古いメールで必要のない件を消去しようと思うが、果てしない情報量。自分が他者に送った言葉、他者から送られた言葉、メーリングリスト(という言葉がもうない)、業務連絡、宣伝、etc。ダイアリーが自分のための個人的な言葉であるならば、メールの言葉はまた別の意味で過去の自分を記録している。自分の文体も違う。時代にも環境にも影響されている。特に2008~2012年くらいの間の「この件とこの件が並行している不思議」具合が凄くて目眩がする。自然環境や経済の制度の問題のリサーチをする一方で時間がある限り山登りをする。山登りは劇場的でもあるのだから総柄のタイツとかを履いていただろう。そこに矛盾は一切なかったのだと思う。今につながると認識している事柄は近く、今と切断されていると認識している事柄は遠く、現在との距離がちくはぐで騙し絵を見た時のような気持ち悪さ(と気持ちよさ)がある。いつか2019年もそのように回想されるのだろうか。

 

・現在を(リ)プレゼンテーションするためではなくいつか回想されるための日記。10/22(火)は祝日。恩赦という言葉の謎。誰の許しでもなく私が私をいつでも勝手に許すことができれば良いと思う。昼に大学へ。担当教授と初めて内容についての面談。目下課題のテキストの精読の冒頭部分の報告。基本的にはこの流れで、注意を分散させずに読み進める予定。では今後は、と話していて、2020年も、2021年も、そして2022年もあっというまに訪れることがわかった。視界が開ける。未来へ向かう意識。

 

・その後池袋経由で新宿へ。途中目白のパタゴニアへ。目白のパタゴニアに来ると高校生の頃のことを思い出す。高校生の頃は「20代で一人暮らしをしたら目白に住みたい」とよく言っていたが、それが無謀な考えであることはあっという間に理解され、しかしその思いつきと思いつきをたしなめるような気づきも、両者とも同じく過去となり、その距離さえ感じないようなひとつの記憶として感じる現在からしてみれば、無理にでも住んでおけば良かったとも思う。回想と加齢の問題。新宿眼科画廊で友人の展示、さらにKEN NAKAHASHIというギャラリーにも。世界堂で額のリサーチ。ビックロでネガフィルム整理用のファイル購入。これでようやく制作の流れを構想できる。せっかくだからとルミネのビショップなど見ているところで期せずして家族と合流。帰宅。

 

・10/23(水)は語学の後に業務。数日ぶりに職場に行くだけで果てしないタスク。昨日敷いた研究の道筋があっさりと霧に消えそうになるが、とにかく雑念を消して事務仕事をやっつける。同時に言葉はクリアにしておかなければいけない。返答することが執筆の筋トレであるように。帰宅してネガフィルムの整理。2018年12月にやってきたGW690で撮ったフィルムは30数本あり、一年で50本程度撮影することを想定していたから少し少ない。

 

・どんな秋よりも印象に残るのはおそらくは2009年に多摩川で焚き火をした時のこと。当時頻繁に集まっていた友人7人が全員集合して、なおかつその場が初めて出会う人同士もいて、友人が実家から貰ってきてきのこなどもあり、どう考えても奇跡のような時間があった。それをいま懐かしのflickrで確認したならば、確かに2009年10月25日のことで完全に10年前だった。そういうことがよくある。スピリチュアルぎりぎりな言い方をするならば「記録に声をかけられるような感覚」がある。それをいま奇跡と思うのは「ああ、これ毎年でもやりたいね」とその場にいた全員が思っていて、そして「こんな程度のことはいつでもやろうと思えばできる」と思っていて、でもその状況は別の状況に変奏されながらも、その出来事自体はもう二度と繰り返されなかったことを知ったからで、しかし本来出来事は何も繰り返されない。その頃に繰り返し聴いていたのはpupaのanywhereという曲。狂った格好をしている自分。焚き火は普遍。