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  映像研究

抽象と映像の夏、2012年の8月・その22

 





・物をつくっている映像。「マウンテン・リサーチ」というブランドがアップロードしていた映像を見て、物がつくられる様子を見る。物をつくりたいと思う。秋になると人は物をつくりたいと考える。夏の終わりに考える秋は無限だ。何でもできそうな気がするから、秋になると本も読みたいし、新しい何かを構想したくもなる。実際の秋がいかに忙しくとも、夏の終わりに考える秋の中では沢山のことが許されている。


・普段自分はあまり「反省すること」をしないような気がするけれども、この数日に関しては反省することこの上なしだった。ワークがルーティンにならないような、あらゆる工夫をしたいと思いながらも、毎年夏の終わりは、このように9月という「向こう岸」に辿り着くのが精一杯になってしまう。積まれたままの本は多数。そして具体的な言葉が失われる。


・「何をしているのですか?」と聞かれたならば「ボールをパスする練習をしています」と答えるかもしれない。そのように考えていたのは『atプラス』という雑誌のインタビューで内田樹という人が「ボール・ゲーム」を「贈与の経済モデル」になぞらえていたことを思い出したからだった。そこには確か「いつもボールが回ってくることを考えてわくわくしている人のところにボールが回ってくる」というようなことが書いてあって、一歩間違うと危うい啓発的な解釈にも転じかねないけれども、その文章の、その箇所を読んで、自分はわりとしっくりきたのだった。


・それで8月の現状、わくわくすることは難しい。「少し落ちついたら『わくわく』しよう」と思っている。いざボールが回ってきてもファンタスティックなプレーをすることが想像できない現状。だけれどもそこから、その現状を「8月の(毎年の)現状」として理解した上で、また何かを考える準備をする。「最近どうですか?」と聞かれたならば「最近面白い映像があるんですよ」と答えられるだけの基礎体力が、着たい洋服を答えられる、食べたいものを答えられる、登りたい山を答えられるような種類の基礎体力が必要である。そしてこの備忘録はそういう筋トレでもある。夏はもうすぐ秋になる。