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  映像研究

秋山特集号のような秋の山。

 
・10月15・16日の金曜日と土曜日。まるで雑誌の秋山特集号のような晴れた(風の強い)秋の日に、北八ヶ岳の「にゅう」へ。「○○山」でも「○○岳」でもなく「にゅう」。もしも「にゅうへ行きます」と聞いたら思わず「それは何ですか?」と訊ねるだろう。しかも平仮名。古い雑誌の秋山特集号には「優しい名前とはうらはらに切り立った岩で・・・」とか書いてあったけど、優しすぎて気味が悪い、そんな任意の点「にゅう」。その「にゅう」を通って「黒百合ヒュッテ」、そして「天狗岳」から「しらびそ小屋」へ。最近流行りのガーリーな山メディア(っていうジャンルがあるんだよなぁ)で取り上げられまくりのスタイリッシュな小屋。そんな小屋にも行く。



前々回の槍ヶ岳山行の際に「涸沢フェス」なるイベントとバッティングしたことによって、最近のアウトドア・ファッションの動向がわかった気がした。そしてそこで思った微妙な違和感に対する自分なりのささやかな試みとして、今の主流の考え方では止まっているときに着る防寒用の衣料は「ダウン」が一般的なのだと思うのだけど、それを「ウールのニット」しかも真っ白なフィッシャーマン・セーターにしてみた。非常に重かったしバックパックの中で場所を取った。しかし着てみるとどんなエキセントリック風情な最新のウェアよりも面白く、何より暖かかった。こういうちょっとしたことが今一番面白い。ただし実際のところは、ダウンを買えないことで「だって寒いんでしょ、今回は行かないでおこうかなー」とギリギリまでうだうだ言ってたら、山部Wちゃんに「道具がないことを言い訳にするな、セーターでも何でも着たら良い」と言われて、「おう、じゃあ着るよ、セーターを」という流れ。



・それでとにかく「秋の山とはこんな風な場所だったな」ということがよくわかる、わかりすぎるほどにわかる、見えすぎるほどによく見える視界のすべて。あの少しくすんだ緑、抹茶色に透明感を加えたような空気、その空気を映しだすための光、あの光をずっと不思議だと思いながら歩いていた。その緑と光、石の白さと強い風について思い返すと、何とも言えない気持ちになる。こういう気持ちを知ることができるのならば、やっぱり山に登ることは、他のことには代え難く楽しいことだと思う。紅葉なんておまけみたいなものだ。それを目当てに行くようなことでもないだろう。そういうことを確認できて本当に良かった。