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  映像研究

休暇

・休日。業務が続いた一週間を経て何も予定がない。準備すべきことはあり、前倒したほうがよい作業もあるが、決定的な予定がない。だからこれは休暇だった。そのことを新鮮に感じている。特に朝。早く起きて食事して洗濯しリビングを掃除したならば外出する。下高井戸シネマへ。沿線に住んでちょうど10年。高尾の時期も合わせればおよそ15年になるが、はじめて行くことができた。魅力的な劇場だった。座席の感じもロビーの感じも放送が入る感じも良い。なぜこれまで来たことがなかったかと言えば、予定が合わなかったからだ。そうした場所が自分には無数にある。行ったことのない場所に行くこと以上に大切なことはない。

 

今泉力哉監督『窓辺にて』を鑑賞。ある時期を境に、映像を学びたいという学生から今泉作品が話題に挙がるようになり、そのたびに「今度見てみます」と濁していた。ようやく見ることができた。最初のシーンで色々不安になったが140分集中して見ることができた。この映画がこれまでの作品と比較してどのような位置づけなのかわからないけれども、一つの特徴として独特の会話の感じがあるのだと思う。言葉の意味が強い。だが会話らしい雰囲気も保っている。「人物像」の定型をなぞっているようであるが、時々それをはみだしそうと感じもする。自分よりもかなり年齢が少ない人が、こうした映画をどのように面白がるのか、興味が湧く。

 

・続けてギョーム・ブラック監督『みんなのヴァカンス』を鑑賞。去年の夏に友人からおすすめされて「それは絶対見ます」と応えたが予定が合わなかったから、これでようやく2022年を終えることができた感じもある。ダンスと音楽ではじまってダンスと音楽で終わる。形のない「感情」というものが動き続けていることを感じながら100分見た。出会った人の存在が少しずつ浮かび上がってくることが現実らしかった。真っ只中の出来事に身体と精神が飲み込まれてゆくことと、それらがすべて等しく過ぎ去っていくことを思う。「若さ」についてのエピソードとも解釈できるが、それだけではない普遍的な意味のある物語りであり映画であると考えていた。

 

・2本見終えて新宿に出て少し衣料品を見る。そういえば半月前に購入したゴルフをはじめて丸々一日履いた。硬い革で足が痛い。俗に(?)この段階を「修行」と呼ぶようだったが、その考えによれば修行とは「いつか終わるもの」なのか。むしろ、いつでも、どのような年齢の誰もが、複数の何事かの修行の途中にいるのかもしれないと、ふと思う。思いながら休暇の初日が終わる。