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  映像研究

2013年の夏の記録

 
・各地で記録的な暑さが続いているようです。高知では41℃。東京でも38℃。体温を超えてしまった。8月11日の日曜日は休みだったから家族とともに調布の写真スタジオへ行き、イベントごとの衣装の下調べをする。その後調布駅北口にある細長いビルの8階にある中華料理店で遅めのランチ。食べ終わる頃には激しい雨と雷。雹(ひょう)も降った。ロータリーを見下ろせば雨を避けながら走る人が見える。食べ終わって駅に行ってみたけれども、京王線は雷の影響で止まってしまった。とりあえずパルコで時間を潰してみるけれども、動きそうにないからバスで吉祥寺へ。そして新宿へ行きその日のやるべきことを済ませた。


・夜には新百合ケ丘のTOHOシネマズで『風立ちぬ』を鑑賞。色々な人が色々なところでこの映画の感想を述べているから物凄く身構えてしまったけれども、主に面白かった。特に中盤が良かった。お昼に定食を食べる感じとか、子供にお菓子をあげようとしたら逃げられるとか、そういう日常的な出来事の描写がとても良かった。車窓がきれいだと思った。そして主人公たちが会社に残って「自主的な勉強会」をするというシーンが一番好きだった。人が集まって何か新しいものを作ろうとする場所が持っている力がある。その力ががっつり描かれていた。


・イメージの中にだけ存在している時には、その単純なかたちや動きの美しさだけで出来上がっている物も、実際に物体として存在する時には、スポンサーのロゴマークが記されなければいけない。例えばそのスポンサーが日本国で、そのロゴマークが日の丸だった時には、その物の美しさはどのように損なわれるのか(あるいはそこで損なわれないものがあるとしたらそのことをどう物語るのか?)ということについて考える。それはきっと戦前でなくとも、戦闘機でなくとも、物体でなくとも、そのようなことはあり得る。だからそれは今の自分(と同じように暮らしている多くに人にとって)の労働の中にある創造性や/あるいは労働と切り離すことの出来ない政治性のようなことについて考えるきっかけになるかもしれない(と思っている自分にとっては毎度のことながらロマンスの下りには焦点が合わない)。


・そういう夏を過ごしている。暑さでじっとりと湿っている空中に微かに読みとれるのは「おもしろき・こともなき世を・おもしろく」という過去のつぶやきに似たようなムードで、きっと多くの人がそう思っている。尚かつ、おもしろければいいってもんでもないのだった。おもしろさは何かを忘れるためにあるべきではなくて、何かを思い出させるための、考えを立ち止まらせるための、そしてしかるべき構えを作るための役割を持っているはずだった。行き過ぎた道徳が暴走する時にはそれを笑い、退屈で干涸びてしまいそうな時には潤いを与える。単純さと複雑さそれぞれの創造性を発見し続けるために動き、生き物を生きながらえさせようとするかもしれない。


・そして唐突に風景が変わる。お盆だ。お盆という行事が気になっている今日この頃。正月のような、ある季節が持っている特別な雰囲気を少しでも感じたいと思って、私たちは日々生活している場所とは別の場所に行きたいと思うのだろう。それが生まれた場所でも、家族にまつわる場所でも、全然関係ない避暑地でも、それはそれで有り。それがいわゆるひとつのお盆休み。