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  映像研究

東北へ行く記録・3日目

 
・6月28日(火)。晴れ。30℃。前日の梅雨らしい天候が嘘のような東北は夏の気候。5時半に起床して朝食。毎朝旅館の朝食を食べるのが嬉しい。メロンも食べる。本日も車を走らせて遠野から小一時間で釜石へ。8時半にボランティア作業の本部へ行ったならば、今日は男性1人と女性3人という、昨日に比べて文化部的なニュアンスを考慮されたからなのかどうなのか、前日の「木材を運ぶ作業」から一転「写真洗浄の作業」にマッチした。昨日初めて知った単語「写真洗浄」。ボランティア作業の本部に仕事の一覧が貼ってあったときに「写真…洗浄…?」と疑問に思い、それが自分が想像している作業で合っているのかどうなのか自信がなかったけれども、確かにそれは「津波で流されて泥だらけになってしまった写真プリントを洗う作業」なのだった。


・写真やら映像やらを専門的に勉強した、あるいは現在もしている、あるいはそれを仕事にしている、ということに一応なっている人たちを中心に構成されているらしい私たちに、よりによってその作業が割り振られたことに、多少の因果的な何かを感じつつも、そのような興味はそれはそれとして、作業は作業として行う。しかしそのような作業が存在することには驚く。ニュース番組等で紹介されたりもしていたらしいけれども、テレヴィジョンを観ない自分はそのような仕事があることをまったく知らなかった。このような状況において人は「写真」を手にすることがあるという驚き。相当に大袈裟だけれども「衣」「食」「住」の次くらいに「写真」だ。あるいは「記録」だ。「衣・食・住・記録」。


・釜石の中心部から少し離れたところにある漁港の町の公民館のようなところに行ったならば、係の人が待っていて手順を教えてもらう。公民館の向かいの恐らくは元・JAらしい建物にて作業をする。たらいにぬるま湯を張って写真を優しく洗う。きれいになった写真は洗濯バサミで吊るして乾燥させる。見知った4人のみで作業していたので、可能な限りシステマティックに作業ができるよう意見を出し合いつつ工夫する。お昼は公民館の方にカップヌードルを頂く。頂いて良いのか一瞬疑問に思いつつも4人とも完食。午後も引き続き洗浄作業。次の日にマッチングされた人にわかるように、今日の作業の進み具合(どれが乾いているかなど)のメモを残して15時に終了。


・集合写真、スナップショット、記念写真、家族写真、肖像写真、ツーショット、旅の記録、変顔、子供の成長、結婚写真、富士山、ディズニー的な場所、政治家が地元を訪問したときの写真、よくわからない写真、ピントの合ってない写真、ピントは合っていても「何故それを撮ったのか」不思議に思うような写真、あらゆる記録、あらゆる映像。秩序なく泥だらけになってしまった写真がダンボール箱にして10箱以上ある。自分たちはそのうちの小さなダンボール1箱分を洗って乾かしたのだった。また次にその場所に来る誰かが別の写真を洗って乾かす。いつか全部の写真が洗って乾かされるだろう。その写真の何割かは、その写真と関係がある人の手元に戻るのかもしれない。その事の全体を少し想像した。


・作業後は一旦旅館に戻って昨日に引き続き道の駅へ。道の駅の展望スペースから風景を見る。田んぼがある風景。田んぼの脇を3両ほどの電車が通る風景。名前がついているのかどうなのかわからないような山のある風景を眺めつつ夕暮れ。そういえば帰ったら『遠野物語』も読んでみたい。旅館の夕食はどんどん贅沢になるようでもはや不安。修学旅行の夜的な、あるいは30代のしゃべり場的なトークを経て就寝。