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  映像研究

ある日。晴れ。南伊豆バックパッキング(2日目)

 
・ある日。それはある4月の晴れた日のこと。テントの中で目が覚める。目が覚めて時計を見ると7時。勘で起きたけど(携帯電話がないのでアラームがかけられないから)意外とちょうどだ。すごいぞからだ。



・お湯を沸かして「おこげスープ」を食べる。余りのポカリスエットを飲む。テントをたたむ。バックにパッキング。バッグをパッキング。早くも暑い。



・辛うじてプリントアウトしていたバスの時刻表によると、バスはなかった(朝イチのバスが行ってしまうと次は昼なのだった)。より詳しい情報は(携帯電話がないので調べられず)わからないけれども、わからないなりに、ひと山越えて隣のへ行き、別のバスの路線のルートに移動すると良さそうだったので、そんなこんなでひょんなことから南伊豆の林道をトレッキングすることとなる。「入間」という場所から「中木」という場所へ、約1時間半のトレッキング。冬のあいだずっと山登りをさぼり気味だったので相当にハードなトレッキングと感じられるも、それは行動食も何も持っていなかったことが原因だったかもしれない。昨日『気流の鳴る音』を読んだせいか、何でもない、木とか石とか葉っぱの影とかが気になって写真ばかり撮る。そして歩く。余りのポカリスエットを飲み干す。到着するとタイミング良くバスが来たものだから、飛び乗って再び下田駅方面へ、伊豆半島の南端をぐるりと回りながら下田駅



下田駅にて早めの昼食。せっかくなので(せっかくばっかりだ)魚の類いのものを食したいと思い、刺身定食的なものを駅前的価格で食べる。美味い。美味すぎて写真を撮るのを忘れてその結果がそれだ(画像を参照)。食べた後お茶をすすりながら読書。読もう読もうと思って布団の横にずっとアレされていた武田百合子『日々雑記』を笑いながら/堪えながら読む。そんなわけでちなみに、この期間の備忘録のフォーマットは『日々雑記』へのオマージュ的な何かなのです。



・そんな風に定食屋でいつまでだって読書をしながら、しかしうっかりすとそのまま一日が過ぎてしまいそうだったので、危険を感じてお会計。お会計したならばバスに飛び乗って再び「下賀茂」へ。30分ほどバスに揺られて下賀茂到着。ところで「シモカモ、シモカモ、って言ってるけどそこに一体何があるっていうの!」という質問にお答えするならば、このバックパッキングの唯一の目的は、この4月に「南伊豆町立図書館」の中に出来た「石垣りん記念室」の訪問だったのです。プロレタリアート界のアイドル(私見です)こと「石垣りん」(ちょっとアイドルっぽい)、あるいは「RIN ISHIGAKI」(パリコレっぽい)、または「りん THE 石垣」(当然ラッパーっぽい)、その人のゆかりの、しかし全然知らない場所に行ってみるというのも、何だか春っぽいのではないかと思ったのでした。



・「南伊豆町立図書館」はすぐに見つかった。とても可愛らしい建物で、いわゆるひとつの「町の図書館」というかんじの場所だったからだ。がらがらっと引き戸の入口から靴を脱いであがったならば、出来たばかりでピカピカの「石垣りん記念室」へ。きょろきょろした後、職員の方に「あの〜写真撮ってもいいですか?」と訪ねると「いいですよー」とのこと。そして「昨日は某国営放送社が取材に来た」とのこと。ここに来るために東京から来たと言うと「りんさんのファンですか?」と聞かれて、どう答えたらよいものかわからず「え…ハイ、まぁ…(赤面)」という返答は少し気色悪かったかもしれない。でもまぁ仕方ない。アイドルですし。写真を撮り、写真を撮る手を休め、古い詩集を手にしてみたり、直筆の原稿を眺めたりしてしばらくそこで過ごす。



・桜を眺めながら散歩。桜を写真に撮りながら散歩。下校中の女子中学生に挨拶されて驚いたりしながら(観光客の人には挨拶するようにと言われているのだろうなぁ/ちょっと良いなぁ)、帰りの電車の時刻がわからないので(携帯電話がないので)、とりあえずせっかくなので(せっかくばっかりだ)「下賀茂温泉」に入浴。春だからといって平日の昼間から、刺身を食い、桜を眺め、火鉢などを見つめ、温泉に入り、休憩室にてゆるめのサスペンスを観賞。一体なんなんだろうかと問えば、答えは「休暇」です。ここでビールなんて飲むとちょっとあまりにもアレだと思って、スポーツドリンクを飲みながらサスペンス。



・16時。バスで下田駅に戻ってIZUQに飛び乗る。恐らくは、ちょっと考えてみれば当たり前だけれども、バスの到着時刻と電車の発車時刻は連動しているのですね。そんなわけでお土産を買う余裕もまったくなく、再び午後の電車に揺られて北へ、東へ向かう。帰りの電車でも読書。読もう読もうと思って鞄の中にずっとアレされていた坂本龍一河邑厚徳『エンデの警鐘「地域通貨の希望と銀行の未来」』を興味深く読む。やっぱり問題(の一端)は「お金」だなぁ、とか思いながら夕暮れの車窓にもやっぱり桜。20時に地元近辺まで帰ってくる。(携帯電話がないので)公衆電話を駆使して山部部長に連絡する。東京だって当たり前だけれどもまだ桜。「桜ソング」的なるものはちょっとこそばゆく、なんなら百害だけれども、もちろん桜それ自体に責任はない。むしろ好きです。