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  映像研究

第五回

・5月の真ん中の日曜日。日曜日の業務の初・完全オンライン版を朝9:00から夜17:00まで。加えて終了後同僚と振り返りミーティングを19:00まで。「途中のあの切り替え余計だったかな」「あのコメントを言葉だけで伝えるのは無理だったかも」など具体的な場面とともに反省する。おそらくこうしたオンラインの業務における時間軸の巻き戻し会議が様々な環境で行われているのだろう。現実の場所で展開されていた業務がオンライン化することで記録/記述可能なものとなる。振り返りが容易になる。映像/音声の記録には本来そういった役割があるのだろう。「近いいつか収束したならばディスタンスを保ちつつ打ち上げしましょうね」と話してログアウトつまり解散する。MacBookを閉じる。ずっと部屋にいた。

 

・一息つき20:00からTravelling Without Movingを聴きながら夕食の餃子を詰め焼く。21:00過ぎにメッセンジャーにチェック・イン。毎週末恒例となった山部オンライン・ミーティングも今回で5回目。友人の近況を聞いて集合住宅の壁の向こうの隣家を気遣いつつ笑う。小中学校、予備校、大学、アルバイト先、小さなサークルが部分的に重なり合いながら隣り合いながら、しかし「山」というひとつの具体的かつ象徴的な存在によって有機的に結ばれる。同じ一枚の集合写真に映し出された私たちがかつて存在していた。山とともに。今はメッセンジャーのスクリーンに集まる私たちの顔が映っている。それぞれの住む家で。ここには何かたしかに引力がはたらいていると思う。見えない力。見えないが消えない力。それを感じ始めた10年前よりも少しだけ色々なことがわかってきた。この「わかったこと」はしかし、なかなか表現する場がない。時々日記に書き留めておく。そして時々会話の場に漏れ出る。

 

・そういう幸福な時間があった。24:00におやすみとログアウト。気づけば15時間スクリーンの前にいたことになる。2020年の初夏。