&

  映像研究

2016年秋のスナップショット

 
・201611170952。以前の言葉を打ち消すために新しい言葉を書いてみる。駅前のパン屋にて。2016年の秋を思い出す時今日のような穏やかな天候を思い出すだろうか。もうすぐもっと寒くなってどんよりした雲の下で生活をすることになる。一瞬の光。本屋に行き必要な書籍を見終わって「少しだけ時間を下さい」と念じながらGINZAや荘苑やNYLONを開いたならばそこには90年代のある時期の感じが濃厚にあってどうしても懐かしいような少し寂しいような気持ちになってしまう。季節は秋。秋と懐かしい時間がぶつかった結果、自分にとっては97年の秋、HIROMIXの『光』が出版された97年の夏から冬までの感じがはっきりと/ぼんやりと思い出される。みんな大学受験で忙しくしていた。忙しい人を見ながらぼんやりしていた時間。あまりにも無為な時間。何も想像ができなかった。そういえば今の自分はそういう年齢の人たちと定期的に関わることを仕事にしているのだった。そう考えると97年に生きていたはずの自分がいかにぼんやりとしていたかがよくわかる。あるいは目の前の一見ぼんやりしているように見える人たちが、実際のところどれだけきっぱりと何事かを話し、何事かを行い、何かを作っているかということがよくわかる。いつか、ふと、思ったことは、自分は「机に向かって何かを書いている人を見ること」が好きなのだ。そこがどこでも良い。仮に教室とか呼ばれる場所を共有しているように見えても全員別々のことを考えている。あるいはその人たちは「別々の場所に存在している」と言えるのかもしれない。そしてそういう空間をそっと垣間みることが、少し背中を丸めて机の上数十センチ先を睨むように見つめる人の気配を感じることが、自分にとっての拠り所のひとつであったかもしれない。「眠っている人がみんな好きだ」はあまりにも真理めいているけれども、何かを書いている人もかなり良い。そのまま話しかけたりなんかせずにそっとしておきたい。201611171009。