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  映像研究

月曜日にやってきた台風が、火曜日には過ぎ去る。ノートを買う。

 
・月曜日。月曜日は引っ越す。朝から実家より車で渋谷の事務所へ向かい、3年間を過ごした部屋からあれやこれやを積み込み、新事務所@西新宿へ運び入れる、つまりそこまでが自分の仕事だ。慌ただしく作業をしていると夕方には雨。台風だってやってくる5月にあって、すべてが終わった夜には、いわゆるひとつの暴風雨になる。そして真夜中にめちゃくちゃな雨の中車を走らせる、そんなときの自分の気分はちょっとした、ハード・ボイルド風の何かだ。


・火曜日。火曜日の午前には流れる雲を見る。過ぎ去る台風を見送る。台風一過的な晴れ間が見え始めたならば、今日は「ノートを買う」のが主な業務だから都内に向かう。青山ブックセンターにあった、立花文穂という人による「プロ.ノート」はそれはもう当然かっこ良いし、定番「MOLESKINE」も思いのほか種類があるので「小さいノートは使いづらくて。どうもね、」とかは言い訳にはならないのだし、あるいはまた東急ハンズで見つけた新定番的な?「TRAVELER'S notebook」だって、その革小物らしさから、色々な点で購買欲をアレされる代物だ。


・そんな中で結局自分は、御茶の水「美篶堂」の、何と言うかとくに特徴がないからこそ説明するのが難しいような、要するに多分「ふつうの」ノートを使ってみることにした。思えば自分はつねに新しい生活には、その生活に相応しい形状のノートを選んで買っていたようにも思う。例えば高校生のときは無印良品のノートを、月に一冊、と決めて、それはもう思い返すのも恐ろしいような字だか絵だかわからない、そのどちらでもないようなものを書いたり描いたりしていた。そしてそのような意味でつまり、今の自分は手帳の隅にちょこちょこっとメモをするのではなくて、ノートをとりたいのだということ。というか「ノートをとる」という響きが、もう既に良い。


・誰かが言ったことのノートをとり、あるいはまた、誰かが言ったような気がしていたけど、もしかしたら誰も言っていなかったようなことについても、ノートをとる。ちなみにペンは赤と黒の2色でもあれば、充分すぎるほど充分だと思う。