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  映像研究

任意の10年

・後から書いておく記録。9月最初の月曜日。引き続き早過ぎた秋の雨の一日。今日こそはとデスクで書く作業を進める。20行(1,000字)程度書き進んだ。合間に学生の出願書類の文章を読みコメントを返すなど。

 

・昼はレトルトのカレー。エリックサウス。ザワークラウトを添えてみるのも良い。

 

・ずっと雲の下だった風景に、夕方一瞬の弱い光が差して窓の外に見える建物の一方が明るく見える。デッサンで立方体を描く見本のような光と影のコントラストを見る。久しぶりに物の存在を見たと思う。触れることはできない距離にある物を見る。触れることはできないから写真に撮る。

 

・夕食を食べながらコムアイのインスタライブを見る。水曜日のカンパネラから脱退して、水曜日のカンパネラには新しく主演の詩羽さんという方が加入するという。約10年勤めてきたチームを離れることには感慨もあるのだろう。20歳の人と30歳の人がひとつの画面の中で対話をする映像を見ながら、さまざまな人が任意に切り出すことのできる「10年」について考えていた。20歳の人が30歳になることも、30歳の人が40歳になることも、ある地点から振り返ってみれば、いずれも必ず圧倒されるような感じがする。そういう時間の密度を垣間見た。

 

・人は驚くほど遠くまで行ける。

 

・自分が水曜日のカンパネラを特に熱心に見ていたのは、2015年から2017年にかけてのこと。まずはdommuneでのパフォーマンスが圧倒的にひらめきに満ちていて、その後Youtubeに次々上がる動画を日々見つつ、スタジオコースト中野サンプラザ、武道館で直に見た。自分の思考が何かと膠着しつつあったその時期に、言葉の意味を放棄して、リズムと音のトーンに身を委ねることには自由があった。あるいはそのような自由に動く身体を見ることには快楽があった。自分にそのような学びが到来するとは予想外だった。各種のアイドルを追いかける人の気持ちが少し理解できたようにも思う。

 

・同時に対談などで語られる、表現活動と政治的なメッセージの折り合いについての話題などにも興味を引かれていた。雑誌でのSEALDs奥田さんとの対談など、一つの時代の証言としていつか読み返すことになるかもしれない。あるいはNHKでの松岡正剛との対話も記憶に残っている。社会の変革の基点に「身体/表現」があることがマスメディアの中心で語られていたのではなかったか。ピースボートのような運動への関心から近年のフィールドワーク=表現まで、幅がありながらも一貫したアクションをしている稀有な存在だとあらためて思う。

 

・少し前に東京都現代美術館のクリスチャン・マークレーの展覧会の関連イベントに出演すると知って、お、と思ったことが最新の情報。いつでも新しい表現を見たい。

サンダル、白いパンツ

・後から書いておく記録。一日業務だった。慌ただしく過ぎてゆく。

 

・予想よりも早く来た秋のために毎朝クローゼットから引っ張り出して服を着る。室内に積まれているのはまだ消化不良という感じの夏の衣料。いつでも着られるとそう思っていると一瞬で季節は過ぎる。あのTシャツもあの半袖シャツも着なかった。ハーフパンツも数年履いていない。数年前に購入したテバのサンダル、古着の白いペインターパンツ、これらを、いつかまた手にすることがあるだろうか。

 

・プリントの入ったTシャツなども、毎年戻りたい戻りたいと思っているけれども、難しいかもしれない。この社会に、このように、生活している意識から、あ、プリントTシャツ着よう、と思う気持ちが、どのように湧き上がってくるのか、忘れてしまった。

 

・一方で、服の形によって、自分の身体に別の動きを介入させることには積極的でありたい。あるいは色も。「からし色のシャツ」も諦めていない。

 

・今手にしている作業が少し進んだら、たとえば16号をドライブしながら、古着や古道具を探しに行きたいと思う。必ずしも何かを購入したいわけでもない。秋の空気の中で、新しい物を見て新しい物に触れたい。書いておく。

 

Amazonで注文していた柳宗悦についての本が届く。20世紀前半、戦前の日本、具体的には1920年代~30年代に書かれた言葉や作られた作品に通じるものについて考えたかった。書いておく。

 

10行(500文字)

・202109041919。雨の土曜日。一日家で作業をする。

 

・合間に衣替えだとクローゼットの衣料を洗濯機に放る。洗濯機を回して干す。風呂場の乾燥のスイッチを入れる。きっとまた暑さが戻ってくるのだろうが寒くなる準備をすることは気持ちを盛り上げる。スウェットや薄手のニットなど手に取りその感触を新鮮に且つ懐かしく思う。

 

・合間の昼食は中華三昧。中華三昧の酸辣湯麺に溶き卵を入れる幸福。身体を温める。

 

・今日の作業は論文を10行書き進めた。一行が50文字だから約500文字。この500文字分も全然しゃきっとしない。しゃきっとしないものを書いては、その土台に何も建築できない。この二週間くらいはこうして一進一退を繰り返している。

 

・作業用のBGMにと、石橋英子『ドライブ・マイ・カー』のサントラを見つけて流し続けている。

 

Youtubeに映像もあった。3分42秒の映像は、現実の3分42秒を写したものであるだろう。実時間そのままの映像を見つけると、何か特別な輝きを持った結晶を手にしたような感覚がある。誰かがある意図によって引き出したひと連なりの時間。それを見る。

 


www.youtube.com

図書館の端の席、雨

・後から書いておく日記。午前中は大学図書館へ行き自分が所属している専攻で過去に学位を取得された方の論文を読む。当然のことながら学ぶことは多い。必要な箇所のコピーを取り考えたことをメモするなど。昼食は大学構内のコーヒーチェーン店で。あっという間に時間が過ぎた。

 

・雨の日に図書館で過ごすのは贅沢に感じる。高校も学部生の頃も図書館で過ごした時間は記憶に残っている。あるいは公立の図書館も。その記憶の場所では建物の外には雨が降っていたのではなかったか。適度な音楽が流れているファミリーレストランや喫茶店なども良いけれども、そうした音楽からも自由である感じが心地よいのだろうか。ある音楽家がエッセイに「雨が降ると何かを先延ばしにすることが許されているように感じる」という意味のことを書いていて、そのような気分を膨らませる空間として図書館は一番適当だと思う。

 

・室内を見渡せる席に座ることが多い。空いていれば。本やノートPCから時々顔を上げると、図書館の空間が広がる。その安心感。時々腕を枕にして目を閉じても良い。

 

・14:00くらいに終えて職場へ向かう。途中「せっかくだから」と新宿のブックファーストへ。柳宗悦について調べたいことがあったことを図書館ではなく書店で思い出す。「Amazonでも買えるけれどもせっかくだからリアルな書店で」という言い訳を用意して文庫本を一冊と書籍一冊を購入した。職場へ。

 

・6時間が一瞬で消える。帰宅。駅まで家族に車で迎えに来て貰う。夜の雨の中を走る車の姿を見る。美しい。麻婆茄子と空芯菜の炒め物で夕食。就寝。