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  映像研究

テーマソング

 
・この数日テキストを書く作業をしていて、書いて、止って、読んで、怠けて、また書く。そういう作業をしていると全く意味のないことも書かざるを得ない。「を得ない」というか、書いている。そんなときに必要とされるのがテーマソングかもしれなかった。書くことを少し緩めてしまうような音楽を聞きたかった。しかしどんな状況であれ音楽を指差すことは難しい。他のあらゆる「指を指すこと」にも増して何かを測られている気がしないこともない。その難しさを回避する誰もが思いつくひとつの方法は「沢山指を指すこと」だと考えられる。手当たり次第に指してみて、ひとつずつの選択に張り付いた(と思われてしまう)その情念のようなことをすっかりわからなくしてしまう。そういう方法がある。しかしそんなことはどうでも良かった。この数日、あるいは数ヶ月にわたって何故かうっすらと流れている音楽、ふと思い出すメロディは、宮沢りえの『心から好き』だ。なぜこの曲のことを思い出したのか。全く分からないけれども、小学生の自分はこの曲の8cmCDを購入した。確か家族が運転している車に夜乗っていて、この曲が流れて少し感じが変わった。夜の車にしっくりくる大人っぽい曲だなと思った。saxという楽器は格好よいのだなと思った。しかし小学生だとしてもまさか自分が宮沢りえのCDを購入することになるとは思っていなかった。1991年か1992年のことだった。そして作詞はビートたけしだった。なぜテレビに出ているあの人が(という言い方も変だけれども)この詞を書いたのか。書けるのか。大人には色々な事情があるのだろうな、と思った。今聞いても(今だからこそ)素晴らしく奇跡的に素敵な曲だと思う。