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  映像研究

春と役

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・記録として。気温が上昇する。湿度も上昇する。それは生き物が呼気や気化した汗によるのではないか。この季節の視界を以前ならば「ぼんやりした」、「柔らかい」などと形容していたが、少し前から「幻想的」、「奇跡のように」と思うようになった。閉じられたものが膨らみ開き、見えなかったものが見えるようになる。そのことに驚きたい。そうしたいと思うまでもなく驚いている。数日の間、年度末/年度始めという制度に向けた各種の連絡をしている。連絡のうちの多くは選択の結果の伝達だから、この季節は膨大な選択をし続ける時期でもある。それは配役でもある。ずっと前から決まっていた役も、急に決まる役もある。誰かが誰かを指名して、あるいは、誰かが誰かを推薦して、役が決まる。幕が開いたならば、基本的にはその役として生きる。この季節は役から開放されている。それは「ほんとうの自分」のようなことでもなく、ただぼんやりした核が右往左往する、例外的な猶予期間かもしれなかった。