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  映像研究

ロータリーを見下ろしている

・202102251720。ロータリーを見下ろしている。耳鼻科の待合室は座席が埋まっていて、ひとつ、ふたつ、空いているシートもあるが、密着するのもどうなのか、スマートフォンをつるつるするのも、見られてるかもと落ち着かないだろうし、と思って入口の近くに立っている。窓際の観葉植物の隣に立っている。いつもよく利用する、いわゆる最寄駅の隣の駅である、数年前まではよく利用していたW駅に、銀行や郵便局に行こうと思って、そうした用事をひと通り終えて、ふと耳鼻科の入ったビルを見上げると、あ、18時まで空いている、そうか、明日耳鼻科に行き花粉症の薬を貰おうと思っていたけれども今日済ませられるのならば、それは効率的だと考えて来てみた。来てみたら意外と、季節的にはまったく意外ではないのだけれども、とても混んでいて、名前を書いて、職場からのチャットワークでの連絡に直接話した方が早そうだからと電話で返事をして、なおかつ待合室で待っている。かなり待ちそうな予感。

 

・ロータリーの周りに見えるのは、牛丼屋、銀行、スポーツクラブ、家電量販店、リサイクルショップ、図書館、テレビ局、ホームセンター、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、そして自分がいるビルの向かいにも、病院の入ったビル、それらがロータリーを、文字どおり、取り囲んでいる。その周りには、タワーマンション、というのか、20階は超えるであろう住宅。

 

・歩いている人は見える限り、ひとりの例外もなく、当然のこととして、マスクをしていて、そうすると、遠いからとか薄暗くなりつつあるからということとは別に、顔の表情が見えない。顔の表情は見えないが、服装、体型、髪型、荷物、そして動き、動きの速度によって、おそらくおおよその、年齢や属性のようなものは見える。二人が並んで歩いていれば、その距離や身体の向き方で、その二人の関係も見える。と思いながら見ていると、友人だか親子だかわからない二人なども見える。どういう文脈なのかわからない「リュックサック」のような鞄も見える。エコバッグか紙袋かも見分けられない、と思ったならば、さっきよりもかなり暗くなってくる。202102251739。

 

・子どもを片腕で軽々しく抱える男性。荷物を持たずすばしっこく走る子ども。右手に杖、左手に白いビニール袋を持つ女性は、少し急いだ様子でロータリーに停まったバスに乗り込んだ。それを見つめるもうひとりの女性。天気は晴れから薄曇りへ移行して今日も寒い。ロータリーに飛び込むタクシーのヘッドライトの明るさに目が止まったことで気がつくと、あたりはすっかり暗くなっていた。銀行、スポーツクラブ、リサイクルショップ、家電量販店の看板がスクリーンのように発光している。もう夜と言っても良いのかもしれない。

 

・子どもを片腕で軽々しく抱える男性と、名指した人が耳鼻科に入ってきて、見えている場所と、見ている場所の関係を面白く思う。名前を呼ばれる。