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  映像研究

炎、熱、煙、光、鹿、水、石、速度

・アフロヘアのウィッグから発火する夢で慌てて目覚めたのは、昨晩ランタンの炎が首に巻いていたストールに燃え移りそうになった記憶に由来するのだろうかと思って朝を迎える。それだけ炎という現象は強烈な印象を残した。キッチンのコンロに生じる現象とは異なる。そして炎によって暖められた身体は、暖房や太陽や毛布で暖められることとは違った種類の熱を持っているように思う。朝再び火を焚く。この炎による熱とともに一日を過ごした。youtubeに焚き火や暖炉の映像がアップロードされていることも納得できる。目で見た炎のゆらぎとその光に手をかざしたくなる。その経験が身体の熱に影響を与える。そして炎で温められ煙で燻された何かを体内に入れる。このような感じは何だろうかと考えていた。10年前のアクティヴィティでは「焚き火はVJ」という認識が到達点だったが、もう少し先に考えを進めることができるかもしれない。「遠赤外線」について知る必要がある。

 

・天高く曇りの合間に晴れ。時折鮮やかな紅葉。車で道を走ると右腕に強烈な日差し。途中道の脇に鹿を見る。鹿と目が合う。目で会話する。しかし注意深い友人たちが誰も気づかなかったというからあれは幻だったかもしれない。樹海から湖へ。湖の水面が波立って時々陽の光を反射する。三つの湖を眺めてそれぞれの水の感じや地面の違いを見る。溶岩由来の石の荒涼とした風景を前に「昔ここで映画の撮影をした」と話した友人の言葉で自分の記憶も引き出される。久しぶりの旅行は記憶を辿るためにあるのかもしれなかった。そして湖の周囲を歩き、湖の周囲の風景の違い、そしてその風景を眼差すであろう人びとの生活の場所の違いを興味深く感じた。「富士レークホテル」のラウンジは素晴らしい。湖が闇に沈む束の間の時間を過ごす。1932年に創業したというその場所からかつてはどのような人がどのような視線でこの湖を見つめていたのか。

 

・旅の終わりはいつでも同じようにせつない。かつては月に一度は山に行っていたからそのせつなさにも慣れていたのだろうか。「またすぐに次がある」と思っている別れとそうでない別れには違った雰囲気がある。車で移動する速度も久しぶりだった。自宅に車を泊めて20:00。ちょうど24時間のショート・トリップ。車に感謝の念を送る。愛車。いまの生活にはない、強く鮮やかな現象や身体感覚が消えない。しばらくの間、それらとともに生活をする。

 

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