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  映像研究

立ち止まると

 
・立ち止まると時間のことを考えてしまう。流れないはずの時間を流れるものとして、その距離を測ろうとしてしまう。「5年前ならば」いや「3年前ならば」とか言ってる。確かに少し前の過去の地点ならば想像もできなかったような現在にいる。現在は更新され続けている。ふと自宅のアパートメントの学習コーナーでビールを飲みながら、宿題をやりながら、誰の何のためでもないテキストを打つ。そのことの価値。これもまた時間を測ることかもしれない。信号待ちの交差点、初台の、オペラシティを地上に出て、山手通りと甲州街道が交差するところ、交差点の全景を見渡しながら、ふと足下を見てみれば、自分が履いているのはダナーのブーツだった(今朝は雨っぽかった)。2007年の年末に購入した靴。何かの願いを込めて、祈るようにして、清水の舞台(小さめ)から飛び降りるようにして購入された靴。その2007年の祈りは微かにいま現在の2016年の秋に届く。靴を見る。その履いた感じを確かめて、やはり時間を、時間の長さを考える。2007年という時間もあった。無限に時間があった。本当にそうかどうかは分からないけれどもそう思う。現在のアパートメントは2LDKで、二人で住んでいる。2007年のアパートメントはワンルームで、ひとりで暮らしていた。恐ろしいほどに遠ざかってしまった「9年前ならば」