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  映像研究

インフォメーション・オブ・インフォメーションの覚え書き

 
・すっかり秋深し的な季節となって、秋といえば文化の秋、そして芸術の秋。様々な文化的かつ芸術的なインフォメーションがあちらこちらを飛び交い、そのいくつかは自分の元にも届く。例えば「ヨコハマ国際映像祭2009」なんていうフェスティヴァルがとても面白そうだ。映像にまつわるオール・スター的なラインナップはもちろんとして(マイケル・スノウという人の作品なんて図録とかでしか見たことないなぁ)一方いわゆるトリエン的な作品とは言いづらい、アクティヴな展示があったりすることにも期待させられる。去年の初め(なのでもう2年近く前のことだ)に大阪に「ビデオ・ランデブー」という展覧会を観に行ったときに、非常に面白いイベントを繰り広げていた「remo」というチーム?が「いるといら」という人たちと展示をしている、などということが「国際映像祭」で実現されていたりすることは、何というかとても希望的なことであると思う。丸一日時間があるときにゆっくり観に行こうと思う。



・色々なインフォメーションはやっぱりその多くが週末に、あるいは平日だとしても金曜日の夜に開催されていたりするものだから、金土日と通常業務があり、一週間単位で考えると完全にコウモリ的なライフスタイルが展開される自分のような人間にとっては、歯ぎしりをしながらもその多くに全然行けず。その中でも昨日は阿佐ヶ谷のロフトAというスペースで、夏に出版された毛利嘉孝という人の『ストリートの思想』に関連したトークイベントがあったものだから、ストリートの「思想」のことがまだまだ全然お勉強し足りないと思っている自分としては、何とも気になっていて隙あらば覗きに行こうと思っていたのですけれども、やはり行けず。残念であるという他無し。



・そしてそのようなインフォメーションが飛び交っているのがtwitterであったりするのも現在だ。ささやき…じゃなくてつぶやきが携帯電話やPCやらを一斉に駆け抜けていて、もはやうまく活用する自信がなかったりするけれども、一応登録はしているのです。この「一応登録はしている」というのが色々なSNS的なものと自分の距離感であって、それは何というか「一応飲み会には来ているけども、全然喋らない人」みたいなもので、そう考えたならばそれはそれでどうかなぁと思ったりくらいはする。「飲み会の喋らない人」はその人なりに楽しんでいるのかもしれないけれども「まぁせっかっくだから喋ろうじゃないか」という「せっかく感」も大事にしていきたい。それにしても「〜〜なう」っていうつぶやきが最初のハードルですね。



・あるいはまた別のインフォメーションは携帯電話に、一方的に、そして暴力的に送信されてくる。何度か記しておりますけれども、ここ1〜2年くらい間の一般的に言うところの「迷惑メール」というものの内容が非常に面白く、テレビを視聴しない自分にとってはほとんど唯一の「一般的な/しかし脈絡のない/欲望を映すものとしての/インフォメーション」になりつつある。いや、普通にもちろん迷惑ですけれども。色々奇妙な日本語が送信されてくるなかで、特にこの間送られてきたメールは凄かったのでして、件名が「日教組の○○ですけれど」で始まっており、思わず「あれ?俺そんな人と知り合いになったっけなぁ?」と思いつつ、よくよく見てみると「副業のお知らせ」とあり「なーんだ……しかし、うーむ。」と思ってしまったのですが、こういうメールの文面を考えている人というのは、何かクリエイティヴ心というか、批評性といいますか、そういうものを意識していらっしゃるのでしょうか。全然わかりませんが、とりあえずかなりトレンディーであることは疑いようのないことに思われます。



・新しいインフォメーションは、全然新しくない雑誌から得るような今日この頃。比較的新しい方であれば1996年のユリイカの「ソクーロフ特集」が非常にインスパイアされるものがあった。特に吉増剛造前田英樹の「魂のイントネーション」という対談は自分がここしばらく気になっていた映画や映像にまつわる問題の一端が書かれていて、変な言い方ですけれどもとても助かった。そして写真と動画と言葉を使った音楽のような表現を思い描いている自分にとっては、あまりにも「そのこと」が書かれているような印象を持った。吉増剛造という詩人について。10年ほど前にまったく自分の意志ではなく目の前でポエトリーをリーディングしてるのを観賞する機会があり、そのとき少しエネルギッシュすぎて引いてしまったことから、それ以来詩に関してちょと苦手意識を持ってたりしたのですけれども(そして松本圭二という人の詩を読んで苦手意識がなくなったのですけれども)少なくとも最近DVDになった映像は観てみたいと思わされました。しかし、あるいは、今観るべきではないのかもしれない。あえて。



・このような、そのような、ことほどさような、自分にとってのインフォメーション。そしてインフォメーションについての備忘録。